「あれ、どっちが正解?」と思ったことはありませんか?
旅行や出張などで関西に行ったとき、「エスカレーターで右側に立っている人が多いな」と驚いた経験はありませんか?
普段は何気なく左に立っていたのに、関西では右側が主流。そんな“ちょっとした違和感”に気づいたことがある人も多いのではないでしょうか。
実際、関東と関西ではエスカレーターでの立ち位置が異なるのが一般的ですが、なぜこのような違いが生まれたのでしょうか?
「マナーが違うから?」「鉄道会社のルール?」──
今回は、身近すぎて意外と知らない“エスカレーターの立ち位置文化”について掘り下げてみます。
なぜ関東は左立ち、関西は右立ちなの?

起源は「万博」と「鉄道会社の意向」
エスカレーターにおいて「どちら側に立つか」という習慣は、実は法律で定められているわけではありません。
それにも関わらず、関東では左、関西では右という“暗黙のルール”がこれほどまでに根づいているのには、地域ごとの歴史的背景が関係していると言われています。
■ 関西の場合:1970年の大阪万博の影響
関西地域で「右側に立つ」という文化が根づいた最大の要因は、1970年に開催された大阪万博(日本万国博覧会)にあるとされています。
当時、世界中から訪れる来場者に対応するため、会場内のエスカレーターで右側に立ち、左側をあけるというルールを設定したのです。これはヨーロッパ諸国の流儀に倣ったものであり、会場スタッフもそのように案内していたと言われています。
結果として、その流れがそのまま地元関西の主要都市に広まり、以後、現在まで右立ちが定着していったというのが通説です。
■ 関東の場合:鉄道会社の案内による影響
一方の関東では、旧国鉄(現在のJR)がエスカレーター導入時に「左側に立って右側をあける」というマナーを推奨したことが、習慣として広まったとされます。
特に東京などの都市部では、通勤・通学などでエスカレーターを利用する人数が非常に多いため、鉄道会社のアナウンスや案内板の影響力は大きく、自然と“左立ち文化”が根づいたわけです。

世界ではどうなっているの?国ごとのマナーの違い
日本国内でも関東と関西で立ち位置が異なるように、世界各国でも「エスカレーターでの立ち位置」に関する文化は多様です。
ここでは一部の国・都市の例をご紹介します。
国・地域 | 立つ側 | 歩く側 | 特徴・備考 |
---|---|---|---|
日本(関東) | 左 | 右 | JRのマナー指導の影響 |
日本(関西) | 右 | 左 | 万博由来の文化が根付く |
イギリス(ロンドン) | 右 | 左 | 地下鉄の案内でも明確に推奨 |
アメリカ(ニューヨーク) | 左 | 右 | 文化として浸透はしていない |
中国(北京) | 左 | 右 | 近年は安全のため2列推奨 |
オーストラリア | 左 | 右 | 基本的に日本の関東と同様 |
このように、国や都市ごとにエスカレーターの立ち位置に関する“正解”は異なります。
また、国によっては「片側をあける」という習慣自体がなく、エスカレーターは基本的に2列で立つものとして扱われているところもあります。
実は危ない?片側をあける習慣の意外なリスク
「片側をあけて歩くスペースを作る」というマナーは、一見合理的に思えます。
しかし、最近ではこの習慣に対して「見直すべきでは?」という声も増えています。
■ 具体的なリスク例
- 歩行中の転倒事故が発生しやすい
- 片側だけに乗客が偏ることでエスカレーターの故障リスクが増加
- 高齢者や障がい者、ベビーカー利用者が不安定な姿勢を強いられる
- 荷物を持っているとバランスを崩しやすい
こうした背景から、東京メトロや名古屋市交通局、さらには埼玉県の一部鉄道会社などが、「エスカレーターは歩かず2列で立ちましょう」という啓発キャンペーンを展開しています。
【体験談】関西出身者が東京で感じた戸惑いと気づき
筆者は関西出身で、大学進学を機に東京へ引っ越しました。
関西では右側に立つのが当たり前だったので、初めて東京のエスカレーターに乗ったとき、自然に右側に立ってしまいました。
すると、後ろから人が「あっ…すみません」と声をかけてきたのです。最初は何のことかわかりませんでしたが、周囲を見渡してようやく自分の“違和感”に気づきました。
これはちょっとした恥ずかしさを伴う経験でしたが、それと同時に「地域によって“当たり前”って違うんだな」と改めて感じた瞬間でもあります。
このような経験を通して、自分の常識が他の場所では通用しないことがある、ということを実感できたのは大きな学びでした。
「片側あけ」は法律?それともマナー?

結論から言えば、エスカレーターにおける「片側あけ」は法律で定められているルールではありません。
つまり、右に立つ・左に立つ・歩く・歩かない、どれもあくまでマナーや地域ごとの慣例でしかないのです。
とはいえ、多くの人が利用する公共の場では、やはり周囲の流れや地域のルールに合わせることが、結果として自分自身のスムーズな移動や、周囲とのトラブル回避につながります。
その意味で、“マナーを守る”というよりは、“周囲との協調性を意識する”という姿勢が大切なのかもしれません。
まとめ|身近なマナーから見える地域文化の違い
エスカレーターで「右に立つか、左に立つか」というだけの話に思えるかもしれませんが、
そこには意外な歴史や文化、そして公共マナーの在り方が隠れています。
- 万博や鉄道会社によって生まれた地域ごとの習慣
- 国によって異なる立ち位置ルール
- 現在は安全面から“歩かない”啓発が進行中
こうしたことを知っておくと、旅行や出張、引っ越し先などでのちょっとした戸惑いがなくなり、より気持ちよく過ごせるかもしれません。
次にエスカレーターに乗るとき、ふと立ち位置を意識してみてください。
きっと、今までとは少し違った視点で周囲が見えてくるはずです。
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